帝王切開をした妊婦のメンタルケア:痛みに耐えないと出産したことにならないの?


無痛分娩近年、帝王切開で赤ちゃんを産む女性が増えています。その割合は、5人に1人といわれ、20年前と比べると倍増しています。理由は様々ですが、ひとつには、高齢出産により、自然分娩を続けることのリスクが高まり、手術による分娩を選択するケースが増えていることが挙げられます。また、不妊治療による多胎妊娠も帝王切開が増えている理由だと考えられています。

妊婦や、赤ちゃんにとって生命のリスクを回避するために行う帝王切開ですが、帝王切開によって赤ちゃんを産んだ女性は、心の傷を負ってしまうことがあり、その後の子育てにも影を落としてしまうことさえあるようです。幸せなはずの出産がなぜ…。


帝王切開の手術の方法

麻酔(硬膜外麻酔、腰椎麻酔)をし、下腹部の皮膚を縦か、横(最近は、横に切るのが主流です。)に切開します。その後、子宮を切開し、卵膜を破り、赤ちゃんを取り出します。最後に胎盤を取り出し、縫合して、お産は終了となります。

手術中、下腹部は麻酔が効いているので痛みはありませんが、全身麻酔ではないので、赤ちゃんの産声を聞くことはできますし、取り出したばかりの赤ちゃんと対面することも可能です。一般に手術は30分から1時間で終了します。その後の入院は、自然分娩より少し長くなるケースが多いようです。


帝王切開をした女性の気持ち

帝王切開をした女性の多くが実は、自然分娩を望んでおり、自分の意思に沿わない形で出産を終えたことで、ネガティブな気持ちを抱えている…ということをご存知でしょうか。自然分娩では、痛みが強く辛い時間が続きますが、その痛みに耐えてわが子と対面することで初めて女性としての大仕事を一つ終えたといえるのに、自分はその大切な仕事をやりきることができなかった…と考えてしまうことがあるようです。

決して、自然分娩が正しくて、帝王切開することが間違っているわけではないのに、「出産がうまくいかなかった私は、子育てもうまくいかないのでは…」と、これから始まる育児についても自信を失ってしまうケースも見受けられます。この気持ちが強くなると、産後うつにもつながってしまします。


周囲の人の言葉が、さらに追い打ちをかけてしまうことも…

周囲の人の何気ない言葉で、帝王切開を経験したママの心がさらに痛むことがあります。
「痛くなくて、良かったね。」とか「産道が傷まなくて、良かったわね。」…など、一見悪気のない言葉でも、帝王切開をしたことで悩んでいるママの心は穏やかではありません。

中には、「楽して産めて、うらやましい。」「生みの苦しみはわからないね」とか、ひどい場合には、「産道を通って生まれていない子供は、我慢がきかないらしいわよ…」など、なんの科学的根拠もない言葉をかけられ、その後長い間、負い目を感じ続けた…という女性もいます。


それぞれの出産を祝福

つい最近、お笑い芸人「森三中」の大島美由紀さんが、元気な男の子を出産されました。彼女の場合は、陣痛から出産に至るまでのリアルな過程がTVで放送され、話題にもなりました。大島さんの苦しい表情は、陣痛の痛みを物語っていましたし、また出産後のほっとした表情には母になった喜びが現れていました。一つの命が誕生することの大変さがストレートに伝わる映像でした。

一方で、母体・赤ちゃんそれぞれの命を守るために行われる帝王切開もまた、大切な命をこの世にしっかりと送り出していることに変わりはありません。知識のなさから、無神経な言葉をかけてしまう人もいるようですが、帝王切開をしたママには、「正しい選択をして、わが子の命を守りこの世に誕生させたんだ」という自信を持ってほしいと思います。

帝王切開をした女性を積極的にケアしようという動きを始めた医療機関もあります。経験者と話す機会を設けたり、助産師さんが専門的な立場から相談にのったりしてくれます。同じ経験をした女性の話を聞くことで、気持ちが軽くなることは多いようです。悩んだとき、つらいときは、入院している時から、身近にいる助産師さん、医師にぜひその気持ちを伝えてみましょう。そして退院の日には、赤ちゃんと明るい気持ちで、新しい生活に踏み出してほしいと思います。