水泳中に溺れる理由や対策は?


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鳥取県米子市で開催されたトライアスロン大会で56歳の男性が死亡する事故が起きました。水泳競技中にうつ伏せに浮いているのが発見され、病院に搬送されましたがその後、死亡が確認されました。死因はわかっていませんが、溺れた可能性があります。トライアスロンに参加するくらいなので、水泳も達者であったはず。そのような人が溺れることがあるのでしょうか。
 
泳ぎが得意な人でも溺れる原因

上野正彦医師は著書『ヒトはこんなことで死んでしまうのか』の中で、健康上の問題もなく、泳ぎの得意な人でも溺水する可能性があると指摘しています。東京都の監察医務院に勤務していた上野医師は、溺死体の解剖で「錐体内出血(すいたいないしゅっけつ)」が全体の50~60%に見られたと言います。

 

なぜ溺れてしまうのか、錐体内出血とは?

錐体内出血とは、錐体という骨の中で起きる出血のことです。錐体は耳の奥にある頭蓋底の中で、中耳や内耳を取り囲んでいます。
水泳中の息継ぎのタイミングを誤ったりして、耳管(中耳と鼻を結ぶ細い管)に水が入ることがあります。これにより水の「栓」が生じます。さらに水を飲み込もうとする動き(嚥下運動)で、水の栓がピストン運動します。ほかに外耳からの水圧もあり、「鼓室(こしつ)」の内圧が急変します。鼓室は中耳の部分で、その内圧が変化すると隣の「乳様突起」も影響を受けて毛細血管が破たん、錐体内出血を起こすとされます。
乳様突起は側頭部の下方にある大きな突起で、耳の後ろにあるので指で確認できます。突起の内部は多数の小さな空洞、「乳突蜂巣」で占められ、これらは迷路状につながって鼓室上部に連絡します。

平衡感覚が失われて溺れる

錐体内出血によって、錐体の内部にある三半規管が急性循環不全になり機能が低下します。そのため平衡感覚がうしなわれ、めまいが起こるのです。この症状が水中で起きた時、泳ぎが上手な人も溺れてしまう可能性があるのです。

溺れる:錐体内出血の予防と対策

では、錐体内出血を防ぐには、そして水泳中に気分が悪くなった時、どうしたらいいのでしょう。

1.    風邪気味の場合は泳ぐことを中止する
風邪の時は中耳炎・内耳炎を起こしやすく、錐体内出血のリスクも高まるため。

耳鼻咽喉科の疾患のある場合は泳ぐことを中止する
耳鼻咽喉科系の疾患がある場合、錐体内出血を起こしやすい状態に。

飲酒酩酊時は泳ぐことを中止する
酩酊時は神経系統が鈍くなるため、耳管から水が入りやすい。そのため急性循環不全が生じやすい。

水泳中の呼吸は口から吸気し、鼻から呼気を出す
鼻から息を吸う際に水を吸い上げてしまうため、耳管から鼓室に水が入りやすくなる。

外耳道に耳栓をするより、鼻栓のほうが有効
外耳道から中耳には鼓膜の働きで水は入らない。鼻から吸った水が鼓室にはいるのを防ぐために鼻栓が有効。

水泳中に水を吸ってしまったら
鼻や口から水をすってしまい、気分が悪くなったら即水泳を中止して水からあがる。

溺れる:錐体内出血は死因にはならない?

錐体内出血は致命的なものではなく、意識はそのまま、めまいが起こるだけです。しかし錐体内出血が起こったまま泳ぎ続けた場合、呼吸がうまくできず溺死に至ります。
錐体内出血は1、2週間で出血が吸収されるために、めまいや平衡感覚も回復します。夏の行楽シーズンには海やプールに出かける人も多いでしょう。遊び・競技に関係なく、錐体内出血の可能性があります。注意事項を守ってレジャーを楽しんでください。